特集

特集1:酒米・交配系譜

【山田錦 系統】(王道・高精白吟醸系譜)

山田穂
×
短稈渡船 (ルーツ:雄町)
1923年(大正12年)交配 / 1936年(昭和11年)命名・奨励品種
酒米の王様(全国シェア1位)

山田錦 (やまだにしき)

兵庫県立農事試験場 線状心白 特A地区・村米制度

高精白に耐える最高峰の酒造好適米。多くの都道府県でオリジナル品種の交配親として活躍している。教本P41-46

▼ 開発と歴史

1873年(明治6年)
地租税(金納)への移行
年貢制(物納)からの移行により「質より量」の傾向が強まり、一時的に酒造米の品質と収穫量が低下する。
1884年(明治17年)
稲作改良組合の結成
品質低下を憂慮した県の指示により加東郡などで組合が設立され、組織的な酒造米の栽培振興活動が始まる。
1893年(明治26年)
村米制度の始まり
奥吉川村市野瀬の集落が西宮郷の酒造家・辰馬悦蔵(白鷹酒造)と交渉し取引開始。これが村米制度の始まりといわれる(※1891年頃の上久米での取引開始説もあり)。
1894年(明治27年)
兵庫県立農事試験場の設立
明石に設立され、翌1895年から種芸部で米の品種改良試験がスタートする。
1908年(明治41年)
米穀検査法の施行
各集落が競って品質改善に取り組み、酒造家とのつながりを深めたことで村米制度が軌道に乗る。
1912年(明治45年)
水稲原種育成事業の開始
優良品種の統一を目的に原種を配布。実質的な栽培奨励品種制度の始まり(雄町、山田穂など11品種)。
1923年(大正12年)
山田穂と短稈渡船の人工交配
1921年に採用された交雑育種法により、「山田穂」と「短稈渡船」が人工交配される。
1928年(昭和3年)
兵庫県立酒造米試験地の設立
加東郡沢部に設立され、生産力の検定試験を開始。山田穂×短稈渡船の雑種集団のうち優秀なものに「系統番号161」が付与される。
1931年(昭和6年)
「山渡50-7」系統名付与
系統番号161から世代を進め、優良な系統に「山渡50-7」という名前が付けられる。
1936年(昭和11年)
「山田錦」誕生(命名・奨励品種採用)
山渡50-7を「山田錦」と命名し、栽培奨励品種に採用。原種の生産配布が開始される。
※翌1937年まで系統選抜が行われ、現在の山田錦のルーツとなる特別な14系統の原々種が構成された。
1938年(昭和13年)
村米格付け表の作成
米田村上久米(現在の加東市上久米)産を基準価格(建値)として、12ランクに分類された格付け表により地域間の品質差が価格に反映されるようになる。
1940年(昭和15年)
臨時米穀配給統制規則施行
他県産米(中上米など)が入手困難となり、県内産米での麹づくりが研究され「山田錦」の酒造適性が高く評価される。これが戦後の栽培拡大につながった。
1945年(昭和20年)
明石大空襲と終戦
7月に農事試験場が被災し、多くの記録を焼失。8月に終戦を迎える。
1951年(昭和26年)
地域別格差(A・B地区)の設定
食糧庁が兵庫県下をA・Bの2地区に分類(翌年Cを追加し3地区へ)。山田錦などの品種で地域格差が設けられる。
1962年(昭和37年)
山田錦 出荷量・作付面積が記録更新
1962年に史上最高の出荷量(29,451t)となり、翌1963年には作付面積が最大の7,840haを記録する。
1964年(昭和39年)
「特A地区」の分類設定
兵庫酒米特別地域振興会の働きかけにより、従来のA地区の中にさらに上位となる「特A-a」「特A-b」「特A-c」の区分が新設される。
1977年(昭和52年)
東条ライスセンター竣工
乾燥から出荷までを集中的に処理する施設が完成。効率化が進む一方で、巨大な貯留瓶は「集落ごとの出荷」を困難にし、村米制度の維持に影響を与えた。
1991年(平成3年)
検査等級制度の改正
醸造用玄米の品位が、特上から三等、規格外までの6段階となる。
2011年(平成23年)
「ふるい目 2.05mm調整」の実施
JAグループ兵庫が山田錦の品質アップを目指し、動力米選機のふるい目を従来の2.00mmから2.05mmに変更・統一。より粒ぞろいの良い山田錦が提供されるようになる。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

究極の高精白耐性

心白の形状が線状心白であり、高度な精白にも耐えられるため、大吟醸酒などの造りに極めて適しています。

Point 2

特A地区と村米制度

兵庫県特A地区の恵まれた土壌と、集落と酒造家が直接契約する「村米制度」による徹底した品質管理によって王様の地位が支えられています。

▼ 代表的な派生品種

× 東北140号

蔵の華 (くらのはな)

宮城県 1997年(平成9年)登録

宮城県初のオリジナル酒造好適米。耐冷性に優れ、淡麗で綺麗な酒質を生む。

× ヒノヒカリ

吟の夢 (ぎんのゆめ)

高知県 1998年(平成10年)登録

高知県初のオリジナル酒米。温暖な気候に適し、淡麗辛口の吟醸酒向き。

× 華吹雪

華想い (はなおもい)

青森県 2000年(平成12年)登録

青森県の大吟醸向け。華吹雪の弱点(高精米時の砕米)を山田錦との交配で克服。

× 新千本

千本錦 (せんぼんにしき)

広島県 2002年(平成14年)登録

広島県の吟醸酒向け。山田錦の優れた酒造適性を引き継ぎつつ倒伏しにくく栽培性を向上。

× 五百万石

越淡麗 (こしたんれい)

新潟県 2004年(平成16年)登録

15年かけて育成。山田錦の高精白適性 × 五百万石のさばけの良さを両立した大吟醸向け品種。

× 西海222号

吟のさと

九州沖縄農研 2007年(平成19年)登録

九州の温暖地向け短稈・耐倒伏性品種。山田錦と同等の吟醸酒適性を持つ。

× T酒25

夢ささら

栃木県 2018年(平成30年)登録

栃木県の大吟醸酒向け。心白発現率が高く、高精白でも割れにくい耐砕米性を持つ。

【五百万石 系統】(早生・淡麗辛口系譜)

菊水
×
新200号 (祖先に亀ノ尾)
1938年交配 / 1957年(昭和32年)命名・奨励品種
全国生産量2位

五百万石 (ごひゃくまんごく)

新潟県農事試験場 早生・さばけが良い 新潟県500万石突破記念

蒸米のさばけがよく、淡麗で爽やかな酒質を生みやすい。心白が大きく50%以下の高精白は砕けやすい。教本P37

▼ 開発と歴史

1938年(昭和13年)
当時の新潟県農事試験場にて、「菊水」と「新200号」の交配により生み出される。
1956年(昭和31年)
戦争を挟み、誕生から18年を経て初の試験醸造が行われる。
1957年(昭和32年)
新潟県産米の生産数量が500万石を突破したことを記念し、「五百万石」と命名される。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

さばけの良さと麹の造りやすさ

蒸し上げたときに粘らず、外硬内軟の理想的な蒸米に仕上がるため、麹が非常に造りやすいのが強みです。

Point 2

「淡麗辛口」の立役者

米質がやや硬く溶けにくい性質があり、これが結果的に淡麗で爽やかな酒質を生み出します。

▼ 代表的な派生品種

× ヨネシロ等

秋田酒こまち (あきたさけこまち)

秋田県 2003年(平成15年)奨励品種

(五百万石×ヨネシロ)を母、(秋田酒40号×華吹雪)を父として交配。低アミノ酸で上品な旨口を生む。

× 山田錦

越淡麗 (こしたんれい)

新潟県 2004年(平成16年)登録

15年かけて育成。山田錦の高精白適性 × 五百万石のさばけの良さを併せ持つ大吟醸酒用酒米。

× 予236

石川門 (いしかわもん)

石川県 2008年(平成20年)登録

予236 と 新潟酒28号(一本〆:五百万石の子)を交配。大粒で心白発現率が高い。

【美山錦 系統】(寒冷地・軽快キレ系譜)

たかね錦
ガンマ線(放射線)照射
1978年(昭和53年)突然変異により誕生
全国生産量3位

美山錦 (みやまにしき)

長野県農事試験場 耐冷性・寒冷地向け 北アルプスの雪より命名

たかね錦の種籾にガンマ線を照射して生み出された突然変異種。スッキリとした軽快でキレのある酒質を生む。教本P40

▼ 開発と歴史

1978年(昭和53年)
長野県農事試験場にて、「たかね錦」の種籾にガンマ線を照射して生み出された突然変異種として誕生する。
その後(現代)
優れた耐冷性を持つため主に東日本へと広がり、現在では醸造用玄米の中で「山田錦」「五百万石」に次ぐ生産量を誇る酒造好適米となっている。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

突然変異による誕生

「たかね錦」の種籾にガンマ線を照射して生み出された、珍しい突然変異種の酒造好適米です。

Point 2

優れた耐冷性と普及

寒冷地での栽培に適した耐冷性を持つため、長野県だけでなく東日本へ広く普及しました。

▼ 代表的な派生品種

× 青系酒97号
(華吹雪)

出羽燦々 (でわさんさん)

山形県 1997年(平成9年)登録

1985年交配。山形オリジナル純米吟醸「DEWA33」の基準原料米(精米歩合55%以下)。柔らかく溶けやすい。

× 八反錦1号

夢の香 (ゆめのかおり)

福島県 2003年(平成15年)登録

八反錦1号 × 山形酒49号(出羽燦々)。福島県オリジナル品種で、「うつくしま夢酵母」とセットで活用される。

【雄町】(すべての酒米の祖とも言える現存最古の名品種)

伯耆大山参拝の帰途で見つけた
ひときわ重そうな2本の穂
純系分離
1859年(安政6年)発見 / 1866年(慶応2年)選出
山田錦や五百万石の偉大なるルーツ

雄町 (おまち)

岡山県(篤農家・岸本甚造) 晩生品種 まろみと秋上がり

1859年に発見された、現在栽培されている酒造好適米の中で最も歴史のある品種。山田錦や五百万石など後に開発された数多くの優良品種の先祖(ルーツ)であり、適度な旨味とまろみのある酒質を生む。教本P33-34

▼ 開発と歴史

1859年(安政6年)
備前国(現在の岡山県)の篤農家・岸本甚造が伯耆大山(鳥取)へ参拝した帰途、ひときわ重そうな穂を見つけて持ち帰る。
1866年(慶応2年)
選抜(純系分離)を重ねて選出。もらった2本の穂にちなみ「二本草」と命名されたが、のちに育成地の地名から「雄町」と呼ばれるようになる。
1917年(大正6年)
岡山県下で約9,000haの作付けが行われるまで普及。大正末期からは赤磐郡軽部村(現在の赤磐市)の村長が宣伝に努め、全国に名を知られるようになる。
1970年代(昭和40年代後半〜)
草丈が150〜160cm以上と非常に高く栽培が難しいため、戦中から激減していた作付けが約3haにまで落ち込む。
その後(現代)
岡山の蔵元らが熱心に働きかけて復活栽培が推進され、現在では岡山県内で約500haが作付けされるまでに回復した。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

日本の酒米の偉大なるルーツ

「山田錦」や「五百万石」をはじめ、雄町の誕生後に開発・育成された酒造好適米の多くは、この「雄町」を先祖に持っています。現存する中では最も歴史の古い偉大な品種です。

Point 2

栽培の難しさと特有の心白

草丈が150〜160cm以上にもなり、非常に倒伏しやすいため栽培が困難です。しかし、大粒で心白も大きく、雄町の心白は「球状で軟らかい」という際立った特徴を持っています。

Point 3

まろみと「秋上がり」

岡山県酒造組合も太鼓判を押す通り、「適度な旨味のある酒になり、酒質にまろみがあり、秋上がりする(夏を越して秋になると酒質が向上する)」という素晴らしい個性を持っています。

▼ 代表的な派生品種

派生 選抜系統

渡船・短稈渡船 (たんかんわたりぶね)

「渡船」は雄町からの選抜系統という説が根強いです。そこからさらに倒伏しにくいものとして選ばれた「短稈渡船」が、のちに酒米の王様「山田錦」の父親となります。

交配 直系の子供たち

山雄67・愛船117

「山田錦×雄町」から生まれた山雄67、「愛国×雄町」から生まれた愛船117など、雄町を直接交配した優秀な品種が多く誕生し、それらが掛け合わさって幻の酒米「愛山」が誕生しました。

【愛山】(雄町と山田錦の血統を受け継ぐ幻の酒米)

愛船117 (愛国 × 雄町)
×
山雄67 (山田錦 × 雄町)
1941年(昭和16年)交配 / 1980年(昭和55年)銘柄指定
雄町 × 山田錦の優良血統

愛山 (あいやま)

兵庫県立明石農業改良実験所 大粒・心白発現率が高い 醪で溶けやすい・芳醇甘口

雄町と山田錦双方の血統を引く名品種。大粒で心白が大きく、醪(もろみ)の中で極めて溶けやすいため、米の甘味とゆったりとした奥深さを持つ味わいを生む。教本P31-32

▼ 開発と歴史

1941年(昭和16年)
兵庫県の酒造米試験地(当時)にて、母「愛船117」と父「山雄67」を人工交配。
1951年(昭和26年)
育成試験が打ち切られるも、地元・加東郡社町(現:加東市)の一部農家で栽培が続けられる。その後、灘の老舗蔵元が契約栽培で秘蔵の酒造米として守り抜いた。
1980年(昭和55年)
長年の実績が評価され、産地品種銘柄に指定される。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

究極の血統ルーツ

母系(愛国×雄町)と父系(山田錦×雄町)の両方に「雄町」の血が入り、父系には「山田錦」が入るという最高峰の血統を持ちます。

Point 2

高溶解性と芳醇な味わい

デリケートで造りが難しい反面、米粒が大きく醪(もろみ)で非常によく溶ける性質があります。これにより、ゆったりとした奥深さと繊細さを持つ、優しい味わいの酒になるといわれています。

【秋田酒こまち】(山田錦に匹敵する醸造適性を持つ秋田の星)

秋系酒251 (五百万石 × ヨネシロ)
×
秋系酒306 (秋田酒40号 × 華吹雪)
1992年(平成4年)交配 / 2003年(平成15年)奨励品種
秋田県を代表する高品質酒造好適米

秋田酒こまち (あきたさけこまち)

秋田県農業試験場 耐倒伏性が高い 高精白可能・上品な旨味

秋田県の気象条件に適応し、「山田錦」並みの醸造特性と「美山錦」並みかそれ以上の栽培特性を目標に開発された酒造好適米。教本P33

▼ 開発と歴史

1992年(平成4年)
秋田県農業試験場にて、「秋系酒251」を母、「秋系酒306」を父として最初の人工交配を実施。
2000年(平成12年)
後代からの選抜を重ね、育成を完了。
2001年(平成13年)
3月に種苗法に基づく品種登録を出願。
2003年(平成15年)
秋田県の栽培奨励品種に採用される。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

美山錦を凌ぐ優れた栽培特性

出穂期・成熟期ともに「中生の中」。稈長(茎の長さ)が美山錦よりも短いため倒れにくく(耐倒伏性が高い)、玄米収量は美山錦並みという優れた栽培特性を持ちます。

Point 2

高度な精白と上品な酒質

大粒で高度な精米が可能であり、蒸米に弾力があって麹が造りやすいのが特徴です。タンパク質が少なく、でんぷんが消化しやすいため、雑味の少ない上品な旨味と軽快な後味を持つ酒に仕上がります。

【石川門】(地元の熱い要望に応えた石川県初の酒米)

予236 (石川県の育成系統)
×
新潟酒28号 (一本〆)
1992年(平成4年)交配 / 2003年(平成15年)品種登録
石川県で初めて育成された酒米品種

石川門 (いしかわもん)

石川県農業総合試験場 早生品種 全粒に心白発現

これまで県内で栽培される酒米の90%程度を占めていた「五百万石」に代わる、地元育成の酒米が欲しいという酒蔵の強い要望に応えて誕生した品種。教本P33

▼ 開発と歴史

1992年(平成4年)
石川県農業総合試験場(現在の石川県農林総合研究センター)において、「予236」と「新潟酒28号(一本〆)」を親として交配。
2003年(平成15年)
選抜・特性調査を行いながら世代を重ね、「石川酒52号」として育成され、品種登録される。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

五百万石と同時期に成熟する早生

五百万石とほぼ同時期に成熟する早生品種です。公募で選ばれた「石川門」という愛称で親しまれています。

Point 2

抜群の心白発現率と米の旨味

酒米に必要な心白が大きく揃いが良く、ほぼすべての粒に発現するという際立った特徴を持ちます。米の旨味をよく味わえる純米吟醸酒や純米酒の醸造に多く使用されています。

【祝】(二度の消滅危機を乗り越えた京都の幻の酒米)

野条穂 (在来品種「奈良穂」から純系分離)
純系分離
1933年(昭和8年)純系分離 / 1990年(平成2年)栽培再開
京都・伏見が誇る復活の酒造好適米

(いわい)

京都府 低タンパク質 吟醸酒向き・淡麗

1933年に「野条穂」から純系分離された京都生まれの酒米。草丈が高く倒伏しやすいため二度も姿を消したが、関係者の熱意により復活を遂げた。教本P34

▼ 開発と歴史

1933年(昭和8年)
「野条穂」から純系分離され誕生。
1955年(昭和30年)
戦後の食糧増産のため一時作られなくなっていたが復活し、丹波や丹後で400haほど栽培されるようになる。
1974年(昭和49年)以降
稲の草丈が高く倒伏しやすい(倒れやすい)という栽培上の弱点から、再び姿を消してしまう。
1988年(昭和63年)
伏見酒造組合の働きかけにより、府立農業総合研究所(当時)等で栽培法を改良し、試験栽培を開始。
1990年(平成2年)
農家による栽培が正式に再開される。
1992年(平成4年)
「祝」を用いた酒の製品化に至る。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

波乱万丈の復活劇

草丈が高く倒れやすいという弱点から、戦中・戦後と1974年以降の「2度」にわたって栽培が途絶えかけました。しかし、伏見酒造組合の強い働きかけによって栽培法が改良され、見事に復活した歴史があります。

Point 2

高い吟醸酒適性と独特の芳香

精米しやすく、雑味の原因となるタンパク質が少ないため、酒造適性が非常に高く「吟醸酒向き」の品種です。淡麗な味わいと独特の芳香を特徴とし、伏見を中心に京都の酒蔵で重宝されています。

【神の穂】(神様にお供えするお酒を造る三重の稲穂)

越南165号 (短稈・耐倒伏性)
×
中部酒97号 (夢山水)
1996年(平成8年)交配 / 2008年(平成20年)認定品種
山田錦の系譜を引く三重県のオリジナル酒米

神の穂 (かみのほ)

三重県農業研究所 食中酒向き 秋上がり・優しい旨味

地元産材料にこだわった商品開発の要望を受け、三重県の気象条件に適応するよう開発された品種。「神様にお供えするお酒を造る稲穂」をイメージして公募で命名され、料理に寄り添うふくらみのある酒質を生む。教本P35

▼ 開発と歴史

1996年(平成8年)
三重県農業研究所にて、短稈で耐倒伏性に優れる「越南165号」を母とし、酒造適性に優れる「中部酒97号(夢山水)」を父として交配される。
2008年(平成20年)
後代からの育成を経て、7月に三重県の認定品種として採用される。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

優れた栽培特性

早晩性はコシヒカリと同熟期の「早生の中」に属します。コシヒカリより多収で、五百万石と同程度の大粒です。心白発現率は五百万石に比べ少ないものの、吸水率が高く良好な醸造適性を持ちます。

Point 2

抜群の食中酒適性と「秋上がり」

蒸し米の溶解が良く、優しい旨味のある柔らかくふくらみのある酒質で「秋上がり」すると言われています。美し国(うましくに)の酒米らしく、料理とのペアリングを意識した食中酒に非常に向いています。

【吟風】(北海道産米の酒造りを切り拓いた開拓者)

八反錦2号 (八反系の優れた酒造適性)
×
上育404号 (北海道の育成系統)
2000年(平成12年)採用
北海道における酒造好適米開発の成功第一号

吟風 (ぎんぷう)

北海道 心白発現率が高い いもち病に強い

「米も水も北海道産」という願いから生まれ、北海道産米での酒造りが大きく広がるきっかけとなった記念碑的な品種。「吟醸酒になるための米」をイメージして命名され、芳醇な酒質が期待できる。教本P36

▼ 開発と歴史

2000年(平成12年)
北海道における酒造好適米の育種開発により、「初雫」とともに採用される。これにより北海道の気候に適した酒米栽培が本格化する。
その後(現代)
吟風の成功に続き、「彗星」(2006年)、「きたしずく」(2014年)が誕生し、この3種が現在北海道の産地品種銘柄となっている。中でも「吟風」は最も生産量が多い。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

「北海道の酒」の立役者

かつて酒造好適米の栽培が難しいとされた北海道において、「米も水も北海道産」という悲願を叶え、道産米による酒造りが道内に広く普及する最大の原動力となった品種です。

Point 2

優れた栽培適性と芳醇な酒質

心白が大きくはっきりしていて発現率が高く、稲の天敵である「いもち病」にも強いという優れた栽培上の特性を持っています。その名の通り吟醸酒造りに適し、芳醇な味わいを生み出します。

【越淡麗】(山田錦と五百万石の長所を兼ね備えた新潟の大吟醸米)

山田錦 (高精白耐性・奥深さ)
×
五百万石 (さばけの良さ・淡麗)
1989年(平成元年)交配 / 2004年(平成16年)育成完了
東西の横綱を親に持つ新潟の傑作

越淡麗 (こしたんれい)

新潟県農事試験場 晩生・大粒・低タンパク質 高度精白耐性

これまで大吟醸酒造りに他県産の山田錦を用いることが多かった新潟県が、自県産の大吟醸酒用品種を求めて15年の歳月をかけ開発した酒造好適米。教本P37

▼ 開発と歴史

1989年(平成元年)
新潟県農事試験場(現在の新潟県農業総合研究所作物研究センター)において、「山田錦」と「五百万石」を交配。
2004年(平成16年)
15年という長い歳月をかけて個体選抜や固定、特性の調査を継続し、ついに育成を完了。新潟県が誇る大吟醸酒向け品種が誕生する。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

両親の中間にあたる成熟期

成熟期は9月20日ごろで、早生品種である「五百万石」よりも遅く、晩生品種である「山田錦」よりも早いという、両親のちょうど中間に位置する晩生です。

Point 2

大吟醸酒に向けた究極のスペック

米粒が大粒で、雑味の原因となるタンパク質含有量が少なく、精米歩合40%を超えるような高度な精白にも耐えることができます。まさに大吟醸酒を造るために生まれた品種です。

【出羽燦々】(純正山形酒「DEWA33」を支える立役者)

美山錦 (母系・耐冷性)
×
青系酒97号 (のちの華吹雪)
1985年(昭和60年)交配 / 1997年(平成9年)品種登録
柔らかくて幅のある味わいの山形県産米

出羽燦々 (でわさんさん)

山形県立農業試験場 高い心白発現率 DEWA33称号認定

山形県が「美山錦」と「華吹雪」を掛け合わせて生み出した酒造好適米。山形県独自の厳しい純正品質基準を満たした純米吟醸酒の原料として活躍し、柔らかくて幅のある味わいを生み出す。教本P38

▼ 開発と歴史

1985年(昭和60年)
山形県立農業試験場庄内支場(当時)において、「美山錦」を母、「青系酒97号(華吹雪)」を父として交配・育成がスタートする。
1997年(平成9年)
12年にわたる育成の末、正式に品種登録される。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

美山錦を凌ぐ粒の大きさと心白

成熟期は美山錦よりも2日程度遅い「中生の中」。玄米千粒重(粒の大きさ)は美山錦よりもやや重く、心白発現率が高いという優れた酒造・栽培特性を持ちます。

Point 2

純正山形酒「DEWA33」の条件

山形県では、①「出羽燦々」を100%使用、②精米歩合55%以下、③山形酵母を使用、④山形オリジナル麹菌「オリーゼ山形」を使用し醸した純米吟醸酒に対してのみ、「DEWA33」の称号と認定証を与える独自の企画を展開しています。(※試験でよく問われる4条件です)

【八反 系統】(広島を象徴する「すっきり美人」系譜)

秀峰 (農林6号×双葉)
×
八反10号 (ルーツ:八反草)
1960年(昭和35年)誕生
広島県の酒造りを象徴する酒米群の代表格

八反35号 (はったんさんじゅうごごう)

広島県 八反草の遺伝子 すっきり美人

1875年育成のルーツ「八反草」の遺伝子を受け継ぎ、現代的なすっきりとした味わいを生み出す広島を代表する酒米。教本P38

▼ 開発と歴史

1875年(明治8年)
地元の民間育種家により、すべてのルーツとなる「八反草」が育成される。
1921年(大正10年)
「八反草」から系統育成された「八反10号」が誕生する。
1960年(昭和35年)
「秀峰」を母、「八反10号」を父として交配され、主役である「八反35号」が誕生。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

「すっきり美人」の酒質

雄町系の酒質が「グラマーなふっくら美人」に例えられるのに対し、八反系は「現代的なすっきり美人」タイプの酒を生み出します。

Point 2

八反草からの歴史的系譜

明治8年に育成されたルーツ「八反草」の遺伝子を脈々と受け継ぎ、広島の酒造りを象徴する酒米として活躍しています。

▼ 代表的な派生品種

× アキツホ

八反錦1号・2号 (はったんにしき)

広島県 1983年(昭和58年)登録

八反35号の収量性の低さを改善した姉妹品種。玄米は大粒で心白発現率が高い。1号は標高200〜400m、2号は400m前後の高地栽培に向く。

夢の香の誕生へ

八反錦1号 × 山形酒49号(出羽燦々)

1991年、八反錦1号を母として交配され、福島県のオリジナル酒米「夢の香」へとさらに血統が受け継がれていく。

【ひだほまれ 系統】(五味のバランスが良い岐阜の代表格)

ひだみのり × フクノハナ (交配種)
×
フクニシキ (父系)
1972年(昭和47年)交配 / 1982年(昭和57年)品種登録
飛騨の高冷地に適応した大粒・高心白米

ひだほまれ (ひだほまれ)

岐阜県高冷地農業試験場 いもち病に強い 五味のバランス

従来の「ひだみのり」の登熟不良や「フクノハナ」のいもち病への弱さを克服するため開発された早生品種。高精白には技術を要するが溶解性が良く、甘・辛・酸・渋・苦の五味のバランスが良い酒を生み出す。教本P39

▼ 開発と歴史

1972年(昭和47年)
3系交配による育成開始
岐阜県高冷地農業試験場(現在の岐阜県中山間農業研究所、飛騨市)において、「ひだみのり」と「フクノハナ」の交配種を母に、「フクニシキ」を父とする3系交配により育成がスタートする。
その後(試験醸造)
「ひだほまれ」の命名
岐阜県内の酒造場での試験醸造を経て、その優れた適性から「ひだほまれ」と命名される。
1982年(昭和57年)
品種登録
正式に品種登録され、飛騨地域のような高冷地に適した酒造好適米として定着していく。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

高冷地適応と溶解性の良さ

いもち病に強く、岐阜県飛騨地域のような高冷地に適応しています。高精白には技術を要する一方、溶解性が非常に良いのが特徴です。

Point 2

五味のバランス

岐阜県酒造組合連合会も挙げている通り、この米を使った酒は、甘・辛・酸・渋・苦の五味のバランスが良い酒を生み出します。

▼ 代表的な派生品種

× 秋田酒33号

富の香 (とみのかおり)

富山県

「ひだほまれ」と「秋田酒33号」を交配させて開発された、富山県産の酒造好適米。

【ひとごこち 系統】(美山錦の弱点を克服した長野の傑作)

信交酒437号 (のちの白妙錦)
×
信交444号
1987年(昭和62年)交配 / 1997年(平成9年)品種登録
高級酒への対応が容易な長野の主力米

ひとごこち (ひとごこち)

長野県農事試験場 大粒・高心白発現率 淡麗で味に幅

長野県を代表する「美山錦」が抱えていた小粒や心白発現率のばらつきといった栽培上の弱点を克服すべく開発された酒米。美山錦より大粒で良質な心白を持ち、腹白米や胴割れの発生も少なく、淡麗で味に幅のある酒を生み出す。教本P39

▼ 開発と歴史

1987年(昭和62年)
交配・育成の開始
長野県農事試験場(当時)にて、「信交酒437号(のちの白妙錦)」を母、「信交444号」を父として交配・育成がスタートする。
1997年(平成9年)
品種登録
10年の歳月を経て品種登録され、美山錦よりも優れた栽培特性(心白発現率が高く、収量も多い)を持つことから、長野県の新たな酒造りの基盤として普及していく。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

美山錦の弱点を克服

長野県を代表する「美山錦」が抱えていた、小粒や心白発現率のばらつきといった栽培上の弱点を克服すべく開発されました。

Point 2

淡麗で味に幅のある酒質

美山錦より大粒で良質な心白を持ち、腹白米や胴割れの発生も少なくなっています。高級酒への対応が容易であり、淡麗で味に幅がある酒になります。

【百万石乃白 系統】(石川県が誇る大吟醸酒向け最新鋭)

山田錦 (酒米の王様)
×
'05酒系83 (石川県の育成系統)
2005年(平成17年)交配 / 2015年(平成27年)品種登録
石川県独自の大吟醸酒用酒米

百万石乃白 (ひゃくまんごくのしろ)

石川県農業総合研究センター 高精白耐性 フルーティーな吟醸香

大吟醸酒造りに県外産の山田錦を多く使用していた石川県の酒蔵からの「大吟醸酒に適する県独自の酒米が欲しい」という強い要望に応えて育成された品種。雑味が少なくすっきりとした、フルーティーな香りの高い酒を生み出す。教本P40

▼ 開発と歴史

2005年(平成17年)
交配・育成の開始
石川県農業総合研究センター(現在の石川県農林総合研究センター)において、「山田錦」と石川県の育成系統「'05酒系83」を親として交配される。
2015年(平成27年)
品種登録と命名
選抜を重ね、山田錦より1週間程度早く成熟する晩生品種「石川酒68号」として育成・登録される。「百万石乃白」という愛称は、石川県の酒米であることや、すっきりとした味わいを表現して名付けられた。
その後(現代)
大吟醸酒の主力へ
その名の通り、現在では石川県内の多くの酒蔵で大吟醸酒の醸造に用いられている。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

大吟醸酒に向けた特有の「心白」

心白が粒の中央に小さくまとまるという特徴を持ち、高度の精白にも米が割れることなく耐えることができます。

Point 2

フルーティーな香りとすっきり感

雑味が少なくすっきりとした味わいになり、大吟醸酒を特徴づけるフルーティーな香りが高く仕上がります。

【夢の香 系統】(福島県の酒造りを支えるエース酒米)

八反錦1号 (広島県の銘酒米)
×
山形酒49号 (のちの出羽燦々)
1991年(平成3年)交配 / 2000年(平成12年)品種登録
五百万石に替わる福島県のオリジナル品種

夢の香 (ゆめのかおり)

福島県農業試験場 耐倒伏性・耐冷性 うつくしま夢酵母と好相性

酒造業界からの「五百万石に替わる福島県のオリジナル酒米が欲しい」という強い要望に応えて開発された品種。溶けやすい米質から、吟醸香が華やかで味のふくよかな酒質になりやすい。教本P42

▼ 開発と歴史

1991年(平成3年)
交配・育成の開始
福島県農業試験場において、「八反錦1号」を母、「山形酒49号(出羽燦々)」を父として人工交配される。
2000年(平成12年)
品種登録と奨励品種採用
福島県初のオリジナル酒造好適米として品種登録され、水稲奨励品種に採用される。
2017年(平成29年)
県内シェアトップへ
順調に作付けを伸ばし、この年に福島県内で最も多く栽培される酒米品種となった。

▼ 試験重要ポイント

Point 1

五百万石を凌ぐ栽培・醸造特性

「五百万石」と比較して稈長(茎)が短く倒れにくい(耐倒伏性)うえ、耐冷性が高いため中山間地でも栽培可能です。さらに、心白発現率、吸水性、消化性も五百万石より高いという非常に優れた特性を持ちます。

Point 2

「うつくしま夢酵母」との黄金タッグ

福島県オリジナル清酒酵母である「うつくしま夢酵母」との相性が抜群に良く、組み合わせて使用されることが多いです。福島県春季鑑評会では、この黄金タッグで醸造した清酒の酒質を競う「夢の香の部」が開催されるほどです。



【復習クイズ】酒米の系譜

上で学んだ内容からランダムに出題されます。知識を定着させましょう!

  • 選択肢1
  • 選択肢2
  • 選択肢3
  • 選択肢4